人生・人間ドラマ・人情 - 風来の森日記 -

風来の森日記

本の紹介、自作ゲームの制作日記

 
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逃避行

逃避行
篠田節子 著

妙子の愛犬のポポが、隣家の子供をかみ殺してしまいます。
度重なるイタズラを受けての出来事だったとはいえ、連日マスコミに騒ぎたてられ、殺処分を望む世論の声に、妙子の家族はポポを見放します。
このままではポポが殺されてしまう。そう考えた妙子は、とうとうポポを連れて逃亡を図ります。

なんとも痛々しい話です。
途中、親切なトラック運転手に助けられ、一波乱あった末に、ついには人里離れたところに家を借りて、ポポとの生活をはじめます。

ごく普通の主婦が、過酷な環境での生活に苦戦する一方で、ポポは生きるためにたくましく成長し、その変貌ぶりに妙子は戸惑います。
そして短い逃亡生活の中で、必死に生き、そして老いていきます。
生きること、老いることを深く考えさせられた小説です。
お勧めの逸品です。

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戦いいまだ終らず

戦いいまだ終らず
落合信彦 著

満州で敗戦を迎え、その後捕虜としてシベリアで強制労働を強いられた大宝米蔵は、帰国後日本一の経営者となるべく奮闘する。


米蔵は、敗戦後の過酷な状況下で培った経験とカンを生かし、着実に会社を大きくしていきます。
その実績をかわれ、破綻寸前の企業の再生を頼まれますがが、長い間ぬるま湯につかった従業員や組合の幹部達が立ちふさがり、危機的状況に追い詰められます。

前半は満州での敗戦経験やシベリアでの強制労働の様子が描かれ、後半に会社を大きくしていく様子、そして様々な危機やそれを乗り越えていく様子が描かれています。起業後の話がメインなのかもしれませんが、それなりの歳月の出来事が凝縮されて描かれているので、もっとじっくり米蔵が奮闘する様子を見たかったような気がします。何巻かにわけても良かったんじゃないかな〜と、ちょっともったいない気がします。
この手の話は、経済の専門用語を連発してるだけのイヤミな作品が多いと思ってましたが、そういうものは一切ありません。時代設定が昭和のオイルショック前後だからかもしれませんが、ほどよく論理的な面を含みながらも、勘とか情とか、わりと人間くさい部分を前面にして会社を大きくしていくので、かなり痛快な話になっています。おすすめの逸品です。

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嫌われ松子の一生

嫌われ松子の一生
山田宗樹 著


タイトルのとおり、松子という女の一生を描いた物語です。

川尻笙は、それまで存在すらしらなかった伯母、松子が殺されたという話を、父から聞かされ、松子の部屋の片づけを頼まれます。
気のりしない笙でしたが、ガールフレンドの明日香が、松子に興味をもったことがきっかけで、松子がどんな人生を歩んだのかを調べ始めます。
話は、笙の調査の様子と、その合間に松子自身の一人称での語りとが交互になって進行していきます。

教師になった松子は、修学旅行先の宿で、お金が盗まれる事件に直面します。
生徒が疑われたため、自分が盗んだことにしてお金を返し、事を穏便にすませようとしますが、それが仇となって、結局教師をクビになってしまいます。
ここから松子の転落人生がはじまりますが、あまりにも世間知らずな松子の行動に少々うんざりし始めたころに、小気味よく視点がかわるため、ついつい先を読み進めてしまう実にうまい作りになっています。
甥の笙も、初めは興味本位でしたが、ひたむきに生きる松子の人生をしるほどに、松子の想いを拾い上げようという気持ちがつよくなっていきます。

男のために風俗店で働こうとしたり、悪い男にだまされたり、覚せい剤におぼれたり、挙句の果てに殺人を犯し・・・絵にかいたような転落人生です。
しかし、努力家で器用な松子は、そのたびに再起し幸せをつかもうとしますが、そのたびに裏切られ絶望します。
幼少のころ、病弱な妹に、両親の愛情をすべて奪われてしまったと感じてしまったことがすべての始まりだったのかもしれませんが、これが人に依存しないと生きられない哀れな女の末路か・・・と、かなりブルーにさせてくれる小説です。しかし心に残る一冊です。
川尻笙とガールフレンドの明日香を主人公にした続編があります。

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きりこについて

きりこについて
西加奈子 著

きりこはブス。
くしゃみをした後のような顔。
目元には暗い影が入り、小さな目は埋没して、ほとんど見えないし、鼻はアフリカ大陸がなんらかの天変地異により爆発したような有様、唇は、難解な歯が幅をきかせおり、爆撃後の街のようになっている。
それほどのブス。
ところが、両親は彼女を心の底から可愛いと思っており、周囲の大人は同情から本音をいえず、そんな環境の中でそだったきりこは、自分の可愛さをみじんも疑うことはなかった。
学校ではリーダーで、同級生達も、なにかに酔ったように、きりこの王座に疑問を持つことはなかった。

そんな勘違いの幼少期から一転、、皮肉にも好きな相手から「ブス」と言われたことがきっかけとなり、みんなの
酔いはさめ、自分のどこがブスなのだろうかと真剣に悩む思春期へと突入。
周囲からすっかりブス扱いされ、ようやく自分がブスだと気づき、ひきこもる青春時代。
激動の人生を歩むきりこと、周囲の人たち(と猫)をユーモラスに描いた、とってもばかばかしいようで、まじめなお話です。

きりこのサクセスストーリーともとれるようなお話ですが、人間の本質にもふれた、とても哲学的な小説です。
きりこの飼い猫ラムセス2世は人間もよりもIQが高く、きりこと意思の疎通が図れます。
これだけハチャメチャな話をクールな目線で淡々と語り、ユーモアたっぷりでありながらも、どこか硬い言い回し。少し違和感を覚えつつ、もしや?と思ったら、この目線はやはり・・・・。
ちょっと変わってますが、面白い小説です。


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初恋温泉

初恋温泉
吉田修一 著

都内で数店の居酒屋を展開する重田は、ある日突然妻の彩子から離婚を言い渡される。
二人で温泉旅館へ旅行にいき、過去を振り返る。
「幸せなときだけをいくらつないでも、幸せとはかぎらない」
妻の心を重田は理解することができるのか。

全部で5つの短編集です。
とくに大きな山場やオチがあるわけではないのですが、なぜかじっくりと読みたくなるお話です。
大人っぽくて、おしゃれな雰囲気が漂う小説です。


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