人生・人間ドラマ・人情 - 風来の森日記 -

風来の森日記

本の紹介、自作ゲームの制作日記

 
5
6
8
21
25
26
27
28
29
30
31
08


きりこについて

きりこについて
西加奈子 著

きりこはブス。
くしゃみをした後のような顔。
目元には暗い影が入り、小さな目は埋没して、ほとんど見えないし、鼻はアフリカ大陸がなんらかの天変地異により爆発したような有様、唇は、難解な歯が幅をきかせおり、爆撃後の街のようになっている。
それほどのブス。
ところが、両親は彼女を心の底から可愛いと思っており、周囲の大人は同情から本音をいえず、そんな環境の中でそだったきりこは、自分の可愛さをみじんも疑うことはなかった。
学校ではリーダーで、同級生達も、なにかに酔ったように、きりこの王座に疑問を持つことはなかった。

そんな勘違いの幼少期から一転、、皮肉にも好きな相手から「ブス」と言われたことがきっかけとなり、みんなの
酔いはさめ、自分のどこがブスなのだろうかと真剣に悩む思春期へと突入。
周囲からすっかりブス扱いされ、ようやく自分がブスだと気づき、ひきこもる青春時代。
激動の人生を歩むきりこと、周囲の人たち(と猫)をユーモラスに描いた、とってもばかばかしいようで、まじめなお話です。

きりこのサクセスストーリーともとれるようなお話ですが、人間の本質にもふれた、とても哲学的な小説です。
きりこの飼い猫ラムセス2世は人間もよりもIQが高く、きりこと意思の疎通が図れます。
これだけハチャメチャな話をクールな目線で淡々と語り、ユーモアたっぷりでありながらも、どこか硬い言い回し。少し違和感を覚えつつ、もしや?と思ったら、この目線はやはり・・・・。
ちょっと変わってますが、面白い小説です。


テーマ : オススメの本の紹介    ジャンル : 本・雑誌

初恋温泉

初恋温泉
吉田修一 著

都内で数店の居酒屋を展開する重田は、ある日突然妻の彩子から離婚を言い渡される。
二人で温泉旅館へ旅行にいき、過去を振り返る。
「幸せなときだけをいくらつないでも、幸せとはかぎらない」
妻の心を重田は理解することができるのか。

全部で5つの短編集です。
とくに大きな山場やオチがあるわけではないのですが、なぜかじっくりと読みたくなるお話です。
大人っぽくて、おしゃれな雰囲気が漂う小説です。


テーマ : オススメの本の紹介    ジャンル : 本・雑誌

十四歳漂流

薄井ゆうじ 著

成長していく少年の心のふるえを鮮やかに伝える寓話集。

いや〜すんばらしい作品です。
大人への憧れや拒絶、悲しみ、不安、束縛や無力感等、思春期に誰しもが抱く感情を、少し幻想的な世界の中で描いています。12作の短編構成です。

14歳から16歳まで、自分が気に入った首が見つかるまで、何度でも首を取り替えられる「首市場」というお話があります。二度と元の首には戻れない事を少年は知らずに、遊び感覚で付け替えちゃいます。その他どの話もなんとなく抽象的に表現されているので、ともすれば何が言いたいのか、まったくわからないような話ばかりなのですが、子供の頃に経験した苦い思い出や、置き忘れてきた、大事な何かが思い出せそうで、なんだかもどかしくなります。心を揺さぶられてしまいました。

テーマ : オススメの本の紹介    ジャンル : 本・雑誌

悪党


悪党
薬丸岳 著

幼いころに、少年グループによって姉を殺された主人公は、ホープ探偵事務所で調査員をしています。
調査依頼の中には、過去に犯罪を犯した者たちの素行調査も含まれ、そこで、いくつかの調査依頼をこなしながら、姉の一件で自分が抱える憎しみの心と向き合うことになります。
話は各章にわかれ、それぞれ別の依頼を請け負い、それを果たす形で話がすすみ、短編小説のような面白さもあります。
その中で、姉を襲ったかつての少年たちの足取りをつかみ、ひそかに彼らの素行を調べ始めます。

「天使のナイフ」や「虚夢」にもあったように、犯罪者、それを裁く法、決して救われることがない遺族の感情が背景にあり、そして本作は「犯罪者を赦すことができるのか」がテーマになっている重い内容ですが、章ごとに、ある程度オチがあるせいか、娯楽要素もあって読みやすい小説です。

テーマ : オススメの本の紹介    ジャンル : 本・雑誌

光媒の花

光媒の花
道尾秀介 著

認知症の母と暮らす男。
ホームレスを殺害した幼い兄妹。
両親の不仲がもとで、耳が聴こえなくなった少女。
ちょっと怖くもあり、悲しくもあり、切なくて、そして少しあたたかい人間ドラマが詰まった連作小説です。
心霊探究シリーズや、その他ホラー系のミステリとはまたちがった面白さがあります。
とても心にしみるいい本です。



テーマ : 読んだ本。    ジャンル : 本・雑誌